設立115周年記念 古流松應会いけばな展|池袋・東京芸術劇場レポート【東京・日本橋の生け花教室】
- いけばな教室 おおら花
- 2025年12月6日
- 読了時間: 7分
設立115周年記念 古流松應会 生け花展

生け花・華道展の現地レポート
東京や全国で開催される生け花展・華道展は、各流派の華道家たちが、日々の修練の成果を披露する特別な場です。
また、生け花を鑑賞するだけで、その作品のエネルギーや、花材が持つ静かな力を全身で受け取ることができます。
私も龍生派の華道家として、さまざまな花展に出品・鑑賞しており、現場で感じた空間構成や花材の使い方などを、華道を習い事として続けている方、これから生け花を始めてみたい初心者の方向けにブログ形式でレポートしています。
各々の流派の特徴や、花展の見どころ、今の生け花の現場感や、そこで得た学びをお伝えしていきます。
今回は、設立115周年記念 古流松應会いけばな展を拝見してきました。

古流松應会いけばな展 115周年という節目
今回の花展は、古流松應会の設立115周年を記念して開催されたものでした。
古流松應会は、江戸時代に始まった古流系統のいけばなの流れを継承する会派で、明治期に再興されてから、長い歴史を歩んできた流派です。
会場には「古流松應会の歩み」として解説パネルが掲示されており、その説明文を要約すると、
江戸中期から続く古流の伝統を受け継ぎ
明治以降に東京を中心に発展し
「生花」と「現代華」を柱として今日まで指導を続けている
という内容でした。
特に印象的だったのは、“山の手は池坊、下町は古流”と言われるほど、東京の文化に深く根づいてきたという点。
今回の花展は、その長い伝統と、現在の作家による現代的な表現が一堂に会する、まさに節目を象徴する展示だったと感じました。

会場は池袋・東京芸術劇場
会場は東京芸術劇場 ギャラリー1。池袋駅の西口から大きな広場を抜けてすぐの場所です。
当日は駅前の大広場でストリートダンスのイベントが行われ、反対側ではオタクカルチャーの催しも開催されていました。
街全体がさまざまな文化で満ちていて、その中で、格式高い華道の花展が東京芸術劇場で行われているという状況に、都市・東京らしい“多様性”を強く感じました。
大きなエレベーターでギャラリー階に上がると、ガラス張りの向こうに今回のメインビジュアルのタペストリー。古流松應会らしい洗練された自由花の写真が使われていて、会場に入る前から期待が高まります。

生花と現代華、二会場構成の展示
115周年記念のいけばな展は、同じフロアにある二つの会場を使い、
生花・古典華の展示
現代華・自由花の展示
という、分かりやすい構成になっていました。
まず私は、生花を中心とした古典華の会場へ。
入口から、普段の花展ではなかなかお目にかかれない特別な展示が目に飛び込んできます。

花衣桁に見る、空間芸術としての生花
古典華会場の最初を飾っていたのが、花衣桁(はないこう)の展示でした。
衣桁は本来、衣服を掛けて、その下で香を焚きしめる道具。大座敷や広間に置かれるもので、床の間に据えることはないとされています。
古流松應会では、この衣桁を用いた花衣桁のいけばなを継承しており、征夷大将軍・足利義満の好みに始まったと伝わるこの形式は、いわば“動く床の間”のような存在です。
同色の花を避けながら、衣桁全体の格とバランスを崩さずに、花と空間を配分していく。
生け花が空間芸術であることを、最初の一作で強く印象づけてくる展示でした。
115年という歴史だけでなく、江戸・明治から続く美意識の厚みが、一気に立ち上がってくるようでした。

古流の生花基本五花型と、典型美の継承
会場奥へ進むと、広いギャラリーの中に、生花がずらりと並びます。
古流の生花は、明和七年刊「瓶花群載」に記載された一志軒今井宗晋の作品を基盤とし、時代ごとの変遷を経て、五つの基本花型へと定型化されてきました。
いけばなは単に植物の美しさを写し取るだけではなく、その植物の出生(生まれ成り立ち)を大切にしながら、
室内空間、床の間を舞台とした季節の再現を行う芸術です。
しかし、自然の姿をそのまま室内に持ち込むには大きすぎる。
そこで、木を一本の枝へと凝縮し、その中に山の風景や、季節の移ろいを凝縮していく。
この「凝縮の美」が、古流の生花基本五花型の魅力であり、いまなお古典として学ばれ、鑑賞され続けている理由だと感じました。
またどの作品の前に立っても、自然と背筋が伸びます。

印象に残った生花の作品たち
季節はちょうど秋口。展示では、松や槙、柳、椿、実ものなど、季節感のある花材が数多く使われていました。
松の葉を束ね、力強い立ち上がりを見せる作品
細くしなやかな枝を大きく弧を描くように扱った作品
舟形の花器に、旅立ちを思わせる構成でいけられた生花
どれも、花材の「生かし方」と「空間の読み方」が見事で、思わず何度も見返してしまいます。
なかでも印象深かったのは、会場中央に据えられた家元の一種生け。
苔を纏った大きな羅漢槙が、深い呼吸をしているように佇んでいました。枝の一つ一つに迷いがなく、長年の鍛錬の積み重ねがそのまま形になっているような作品。
“115周年の中心”を担うにふさわしい迫力で、会場全体の空気を引き締めていました。

もう一つの会場、現代華・自由花の世界
生花会場を後にして、もう一つの会場、現代華・自由花の展示へ。
会場には、伝統的な花材とモダンな花器を組み合わせた作品や、思い切った角度でいけられた作品など、生花とはまた違った“自由な呼吸”を感じる作品が並んでいました。
なかでも、千羽理芳家元先生による自由花は、会場の外へエネルギーが溢れ出すような作品。
藤蔓を大胆に扱い、緊張感のある線を保っていて、“自由花”と呼ぶにはあまりにも密度の高い、圧倒的な表現でした。
古流の生花と、龍生派の生花
私は普段、龍生派で生花や自由花を学んでいます。龍生派にも古典華の体系が数多く存在している中で、
古流松應会の生花を拝見すると、同じ「生花」という名前でありながら、枝の捌き方や水際の決め方、空間の密度の作り方が少しずつ異なっているのが分かります。
共通しているのは、いずれも長い時間をかけて鍛えられた身体知の上に成り立っているということ。
流派が違っても、素材であるお花・植物と真剣に向き合う姿勢は変わらないのだと、改めて感じました。
今回の花展で学んだこと
今回の古流松應会115周年いけばな展で私が特に学びとして持ち帰ったのは、次のような点です。
花衣桁に代表される、「格」と「空間」の両立
生花基本五花型に宿る、典型美の強度
そして何より、枝の一本一本、葉の一枚一枚にまで意識が通った作品からにじみ出る、長年の鍛錬の重みでした。
作品を前にすると、「自分ももっと勉強しなければ」と自然に背筋が伸びます。

東京・日本橋のいけばな教室「おおら花」について
東京・日本橋にあるIKEBANA STUDIO おおら花では、
初心者向けの体験レッスン
習い事として継続したい方向けのコース
師範・資格取得を目指す方
将来、作家として活動したい方
など、さまざまな目的の方に向けて生け花教室・華道教室を開いています。
流派は龍生派ですが、今回の古流松應会いけばな展のように、他流派の花展にも積極的に足を運びながら、広い視野でいけばな・華道を伝えていきたいと考えています。
東京観光の合間に体験レッスンにご参加いただくこともできますし、お仕事帰りに通えるスクールとしてもご利用いただけます。
生花や自由花を通じて、植物と向き合う静かな時間を持ちたい方は、ぜひ一度、東京・日本橋のおおら花へお越しください。








コメント