前代未聞の大阪万博の生け花展に行ってきました
- いけばな教室 おおら花
- 11月7日
- 読了時間: 8分
更新日:11月20日

はじめに
なにが前代未聞の生け花展なのか
2025年10月7日、東京から大阪へ向かいました。
目的は、大阪・関西万博の会場内で開催された「日本いけばな芸術特別企画」を拝見するためです。
この展示は、生け花の64流派・86名の代表作家が参加し、家元クラスの作品が一堂に並ぶという、
いけばな界でも非常に特別な企画でした。
これほどの流派を紡ぐ作家の視点と手数が、同じ場所で並ぶことは滅多にない。
生け花を学ぶものとして、その現場で拝見するだけでも、大きな意味があることは明確でした。
発表が比較的突然だったこと、準備期間の短さが推測される点、そして万博の終盤で入場予約すら容易でなかった状況。
それらを踏まえると、「今、これを見逃すと二度と同じ状況はない」という思いが強くありました。
チケット争奪戦を経て、無事に現地へ。
ここでは会場の空気、作品の紹介と印象、
そしていけばなを学び続ける立場として得た気づきをまとめていきます。
この記事でわかること
・大阪・関西万博とは
・万博という「未来の場」
・展示の印象と見どころ
・使用されていた花材の傾向
・自分自身の目
・観ることもいけばなの一部
・まとめ大阪・関西万博とは?

“未来”と“世界”が交差する会場
まずこの企画の重要性を理解するためにも、舞台である大阪万博について触れたいと思います。
テーマ:いのち輝く未来社会のデザインこのテーマのもと、
世界150以上の国や地域が参加し、未来の暮らし、技術、環境、文化を発信する国際博覧会です。
2025年は大阪、その次の開催は5年後にサウジアラビアの首都で開かれる、リヤド万博になるようです。
個人的には、生まれる前ではありますが、同じ地で行われた、大阪万博、EXPO’70に大変強い憧れがありました。
丹下健三、岡本太郎、前川國男、横尾忠則、亀倉雄策、イサム・ノグチ、コシノジュンコ、ミロ、安倍公房。
名だたる作家、アーティストが参加しており、
そしていけばな草月流3代目家元の勅使河原宏氏が映像のクリエイションにも携わっています。
また公式では発表されていませんが、迎賓館などでは、前衛いけばなの中心人物であった、
草月流初代家元の勅使河原蒼風氏も参加していたように、いけばな界にとっても深く関わりのあった、日本の伝説の国際博覧会。
2回目の大阪万博はどのようなものになるのかと、筆者も大変楽しみにしていました。
開催地:大阪・夢洲(ゆめしま)
会期:2025年4月13日〜10月13日
参加国・地域:150超
想定来場者:数千万人規模

会場に入ると、メディアで報道の通り、
駆け込み需要の人の熱気もあり、ディズニーランドのような、アトラクション会場に来た第一印象でした。
そして海に囲まれた人工島に立つ、大屋根リングと、巨大パビリオン群はまるで未来都市のようでした。
会場内では、サステナブル素材が使われ、ランドスケープ、移動導線も滑らかにデザインされています。
「未来はどのようにデザインされるのか」それが実際の空間として体験できる場所であり、技術・科学だけでなく、そこで文化も語られるのがこの万博の特徴です。
その中に、いけばなが置かれていた——それはただの「日本の伝統文化」ではなく、“未来の文化”として歩むいけばなが問われる場でもあるのかとも感じます。

大阪万博という「未来の場」に生け花が立つ光景
絵本作家、山下浩平さんがデザインした、ミャクミャクのカラー踏襲のフライヤーが良い。時代を表す特別な花展です。
展示会場へ着くと、入り口には入場を整備する係員の方もおり、大変多くの人で賑わっていました。

賑やかな通路やパビリオンの映像音からすこし離れた角の場所でしたが、
無料で見れることもあって入場にも少し並ぶような人気の場所でした。
展示室内では、通路の動線は確保されていましたが、開幕初日ということもあってなのか、牛歩のようにゆっくりと進みながら拝見する形でした。(ゆっくり見られるの嬉しい。)

来場者は、大阪万博を楽しみにしていた観光客がほとんどで、本当に老若男女さまざまでした。
会話を聞いていると、生け花の鑑賞自体初めてという方もいらっしゃたり、生け花人ではない方がほとんどで、私も嬉しく思い、一緒に初めて見る感覚で楽しみました。
皆、声を潜めながら作品へ近寄り、足元を確かめるように歩いていました。
未来をめざす国際博覧会で、自国の文化の素晴らしさを改めて感じていく。その場はやはり特別なものでした。

展示の印象と見どころ
作品の一部の写真を抜粋して紹介します。
会場のほとんどの作品が、中〜大作品の構成になっています。
50〜75cm四方の白ボックス席に、華道、生け花の流派の代表する家元の作品が展示されていました。
生け花の家元クラスになると、作品の迫力が桁違いで、どの作品も目を惹くものでした。

生け花の魅力でもある、伝統格式高い古典的な生け花作品から、
珍しい植物を使い独創的に生けあげられた、現代的な自由花まで、見どころは多数。
花、植物を入れる花器、花瓶も、家元クラスが出品することもあって、普段はお目にかかれないものまであり、大変に感動しました。

使用されていた花材の傾向
昨今、日本の天候も二季と言われてきてもいますが、
汗ばむ10月上旬の中でもしっかり四季の秋を彩る花材が多く、拝見することができました。
分類 | 品種 |
実物 | 柿(カキ)、ツルウメモドキ(赤い実)、ナンテン、フォックスフェイス(ツノナス)、ピラカンサス、ハナミズキの実、バラの実(ローズヒップ) |
枝物 | ヒムロスギ、コニファー類、クロマツ、五葉松、サンゴミズキ、ウメモドキ、ナナカマド、白樺(樹皮素材含む)、流木、根株、枯枝 |
花 | アンスリウム、グロリオサ、ピンクッション、ラン(シンビジウムなど)、ストレリチア(極楽鳥花)、トルコキキョウ、カーネーション、リンドウ |
葉もの | ドラセナ(赤系・縞葉)、バナナリーフ、カラテア系大型葉、アレカヤシ、ニューサイラン、リュウゼツラン系の乾燥葉、蘇鉄葉 |
柳・蔓 | 雲竜柳、キウイ蔓、藤蔓、晒し枝(漂白ツル系)、ススキ、パンパスグラス、ミツマタ、ツル性植物 |
枯材・造形素材 | 枯葉(バナナリーフなど)、流木、根株、乾燥木片、竹(加工花器含む)、樹皮(繊維状再構成) |
伝統 × 文化 × 現代 × 未来、そのテーマもあって秋の花、植物に
器も、土物・金属・ガラス・現代素材まで幅広く、素材の合わせ方に対して、時代性が混ざりあう展示でもありました。

自分自身の目で感じたこと
著者は、いけばな龍生派の生け花人として、
今回は花展のテーマとして作品を作ることに対し、学ばせていただいたと感じています。
「未来につなぐ、いけばな文化」
各流派の存在があるからこそ、いけばなという文化の火が消えなかった。
生け花の文化を後世に繋いでいったことで、今私たちもこうして華道、日本文化を楽しんでいます。

先へバトンを繋げていく、口伝。
人から人へ、作品を通して、熱が移り変わっていく、先へ伸びて花が咲いていく。
展示全体から受け取ったのは、秋の実、彩鮮やかな紅葉の華やかさよりも、テーマへの誠実さだった気がします。
観ることもいけばなの一部
作品を観ることは、制作と同じくらい重要です。
どこに心が動いたのか
どうしてこの作品に惹かれたのか
それを丁寧に言語化すると、次に植物と向き合うときの解像度も変わっていくと感じています。
大阪万博では前代未聞の華道家元クラスが一堂に集結する展示を拝見し、生け花を学ぶものとして、大変勉強になりました。
東京日本橋に戻り、今後も生け花展のレポートを行いますので、ぜひ海外の方もお楽しみ下しさい。
いけばな教室 おおら花について

著者の運営する、東京日本橋のいけばな教室 おおら花では、生け花をいける作者の個性を大切にする流派である、
いけばな龍生のカリキュラムを元にして、今の時代にあった現代的な自由花作品から、
伝統格式高い、古典華まで幅広く指導を行っています。
歴史と文化が息づく東京日本橋という土地で
建築デザイン事務所がリノベーションを施したスタジオギャラリーで
今行きたい生け花教室として、「おおら花」は運営しています。

この空間は、さまざまなクリエイターが集まるシェアアトリエ、ギャラリーとして構えており、
伝統的な空間ではなく、現代的で洗練された場所で、誰もが自由に花と向き合える時間を提供しています。
体験レッスンも受け付けています。はじめての方もお気軽にご参加ください。
まとめ
大阪・関西万博で開催された前代未聞の生け花展は、伝統と現代、そして未来が交わる特別な空間でした。
64流派・86名の華道家による作品が一堂に並ぶその光景は、日本の美意識と創造力の広がりを改めて感じさせてくれます。
時代を越えて受け継がれてきた「いける」という行為が、未来社会を語る場に立つ——
それは、生け花が決して過去の文化ではなく、今も呼吸し続ける“生きた芸術”であることの証でもありました。
東京・日本橋のいけばな教室「おおら花」では、
この“生きた文化”を次世代へつなぐため、国内外の方々に向けて、伝統と自由を併せ持つ生け花体験を行っています。
花を通じて日本文化の本質に触れたい方は、ぜひ一度お越しください。




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